資産運用を始める方に伝えたいこと
入 倉 1回目の座談会では、「資産運用に向いている人、そうでない人」について皆さまに話していただきました。今回は、「資産運用をこれから始めようとしている人や見直そうとしている人に対して、どのようなことを伝えているか」です。実際、資産運用をやっていたけど、何らかの理由でGAIAへお越しいただくケースも多いです。そのような方に対して、どのようなことをお伝えしているのかをお聞かせください。
宮 原 必ず聞いていることは、「資産運用をなぜ始めようと思ったか(WHY)」です。始めたってことは、何らかの目的があると思います。それを聞くことで、その目的のために始めたんだな、と共通の認識が生まれるので、非常に大事なところだと思います。ある資産運用の方法が良いかどうかは、あくまで我々個人の考えなので、そもそもお客さまのニーズを共有するためにも、まずはそれを聞いていますね。
入 倉 それを聞いてどの様な反応がありますか。
宮 原 「なんとなく始めました」と言うのもあれば、「お金があるから運用しなきゃ!と思ったんです」というのもあります。そもそも資産運用をする理由については、「(何らかの)将来のために」がまず出ます。それが、「将来『使う』ため」だったり、「使う予定はないけど、豊かに暮らしたい、安心したい」と言った思いが出てくるとのだと思います。まずはそこをハッキリとしてもらうように。と言っても、なかなかハッキリしない面もありますが、、、少なくともイメージはしていただき、今やろうとしている事は自分に合っているのかどうか、今運用しているのはそれに向かっていくというものなのかどうか、という点は大事だと思っています。そこで伝えているのは、お客さまが最初どんなきっかけでスタートしたとしても、「今お考えになっている将来のイメージと、資産運用の方法が合っているのかどうか」という点ですね。「その目的だったら今の資産運用の方法でもいいですね。」と言うこともあれば、「その目的と今の資産運用の方法は本当に合ってますか?」っと投げかけることもあります。
入 倉 なるほど、それではなんとなくやっているという方でも、後からそういう理由が見つかってくる、というケースもありますか?
宮 原 なんとなくの中に理由(WHY)があるというか、丁寧にお聞きすると、だいたい出てくるものかなと思っています。「何のために」から聞くとお客さまも困ってしまいますしね。
鈴 木 5W1Hの観点ですと、私はWHYが全てを包括しているのかなと思っています。いくら(HOW MUCH)資産運用するのかも、どんな形(WHAT)で資産運用するのかも、すべて、なぜ(WHY)が根本にあると思います。宮原さんが仰るように、こちらから伝えると言うよりも、お客さまがなぜこれまで資産運用をしているのか、それともしてこなかったのかを伺います。またお客さまには「なぜGAIAにいらっしゃったか」ということをベースに話を聞いていくことで、その方の考えとかGAIAに求めていること、資産運用してどうなりたいとか。そういう部分がシェアできた上で、私が何かアイディアを持っていれば、そこでお役に立てるアイディアを提供できると思います。また必要な(適正な)運用額も見えてくると思うので、お客さまが資産運用に対してどう考えていらっしゃるかを最初に聞くのは、一番大事なのかなと思っています。
新 屋 なるほどと思いました。なぜ資産運用するのか(WHY)っていう答え。シンプルに答えると、いくつかパターンがあると思いますが、「銀行に預けておいても増えないからという人」、それから「将来が不安だからちょっとでも増やしたい、増えるんだったら増やしたいと言う人」、「親がやっていて、増えているというのを目の当たりにして」など。このパターンは少ないと思いますが、「やらないともったいない」みたいな人もいます。「老後のために2,000万円の貯蓄をなんとかしないと!」という方はGAIAではあまり会うことがないので、どちらかと言うと、「銀行に預けておいてもしょうがないから、なんとなく」。表面的な理由はそこが多い気がしますね。ただ、それでもリスクを取ってまで運用すると言うところには、何かしら深いところに理由というのはあると思うので、いろいろヒアリングをさせていただいて、次第に分かっていく。と言うケースが多いですね。
三 橋 そうですね。理由はいろいろありますね。退職金が入ったからとか、40代の方とかだと、老後資金をそろそろ準備しないといけない!全然やってなくて急いでやらなきゃ!みたいなケースもありますね。メディアで老後資金が足りないとか言われているので、最近は特に。一方で、理由がないと言うか、惰性でそのままみたいな方もいらっしゃいます。もともとは自分で資産運用をしていなかったけれど、相続で全部受け継いで、塩漬けになってしまっているケースですね。ある程度の見直しはしたものの、そのまま継続していって、もうやめる理由もなくて。相続や保険金受取などの外的な要因で入ってきて、それをきちんとしたものにしたら、なんとなく増えていったから、そしたらやめる理由もないという。
入 倉 そのような方はどのくらいいらっしゃいますか?
三 橋 けっこう多いですね。例えば相続で資産を継承し、そのレールに乗って、そのまま進んでいって、もしそれがもうメタメタに減ってしまっていたらやめてしまっていると思うけど、まっとうな運用をして、トータルリターンがプラスになっていれば、やめる理由もないですし。
入 倉 それでは、運用をしていく中でその目的や目標を、その方自身が発見するケース。もしくは発見を促したようなことはありますか?
三 橋 実際にあるケースですと、あるお一人様の女性ですが唯一の親族に無職の甥っ子がいる方です。その甥っ子にお金を残したいからお金を運用しているっていう。それが本当に目指したい唯一のゴールかはわからないですが。その方にとって資産運用をやっている理由の1つではあります。親族に無職の甥っ子がいて、その方のためにマンションを買ってあげて、住ませて、と。それもいいんじゃないですかって。ご自身の家族がいないから資産運用のゴールがそこになっている。
宮 原 相続を受けたものの、それは今までの生活と別のところから来ているので、それを使わなくても生活はできるっていう方は結構多いんじゃないかなと思っています。そうなると、遺してもらったものを今度は次の誰かに遺したいっていう意向の方は結構いらっしゃると感じます。何かのために殖やすというよりも、自分たちが使うべきところでは使い、それ以外でも残る資産というのは次の世代に遺していくために資産運用していきたい。そういうお考えの方は結構いらっしゃるかなと思います。必要なものはそこから使うにしても、全部使いきることはないので。自分たちはそのおかげで助かっているし、だったら子どもにも、って。三橋さんの話だったら甥っ子さんでしたけど、そういう形で遺してあげたいなというのはある気がする。いろいろやってもらったから、こういう事をしたい。ってもらった側は思うし、仮に結婚していれば相手側は全然違う形式だったりするし、ちゃんと聞くと、いろいろ出てきますね。自分がいろいろしてもらった思いというのは、それにプラスアルファでついてくる気がします。
三 橋 遺してあげたいという気持ちは、ほとんどの人が持っていると思います。自分の子どもに何か残したいって思うでしょ?それは資産が大きくなればなるほど思うんでしょうね。
宮 原 そうですね、何かしてあげたいっていう気持ちはありますよね。何か遺す前に。
三 橋 子どもとか妻がいれば、だいたいそうなるけど、そういう人がいないお一人様なら、甥とか姪とか寄附とか、そういう感じになることはありますね。
鈴 木 むしろ遺したくないっていう人もいましたよ。すごいお金がありすぎるから。堕落しちゃうみたいな感じで。子どもじゃなくてNPOなどの団体へ寄付を、っていう方もいましたね。その方はお子さまが小さい時には教育にお金をたくさん使ってあげて、社会人になったらもう自立しなさい、と言うお考えでしたね。
入 倉 新屋さんはどうですか?今のようなお話でも、ヒアリングの際に意識して聞いていることなどあれば。
新 屋 「遺せるならできるだけ遺したい」というお考えの方は実際多いと思います。一方で、例えば60代の方でこんな方がいらっしゃいました。そんなに遠くない将来の、ご自身の老人ホーム代を考えている方で。ホーム代が、足りないわけではないんですけれども、もうちょっと多く出せばもう少し豪華なところにも行けるな、とか。また、ある40代の方のケースだと、老後の年金プラスアルファのお楽しみ代を確保するために、今のうちにちょっと殖やして準備したいと言う人もいます。反対に、ある程度の資産を持っている人であれば、昔でしたら銀行に預けていれば4~5%の利息がついいたので、利息の分は自分たちで使って、元本分は、次の世代に・・・という風にできましたけど、今はなかなかそういうのができないですからね。お一人様の方でも、運用で増えた分はお楽しみに使いたいし、後期高齢に向けて医療費とか介護費などをとっておかないといけないから。そういうものをうまく資産運用で捻出できたらいいなっていう。
資産運用のゴールとは?
入 倉 ところで、初めてお会いするお客さまやお付き合いの長い方とお話をする中で、よく「ゴールベース・プランニング」という言葉を使っていると思います。その「ゴールベース・プランニング」を実行するにあたって何か心がけていることはあるでしょうか。
鈴 木 私はゴールがあることが当たり前ではないと考えています。さっき皆さんがお話していたように、誰かに遺したいとか、こういうことをしたいんだ、と言った強い思い持っていらっしゃる方は確かにいらっしゃいます。しかし40代、50代でまだ現役で働いている方ほど、10年20年先を見据えた時に自分のビジョンが曖昧な部分がある方も多いと思います。とは言っても、「より良い老後の生活を送りたい」とか、そういうちょっとしたニュアンスも明確なものでなくても、それはゴールなんじゃないかなと最近は考えています。むしろこういう場所(GAIA)にお越しいただいて、普段あんまり考えていないことを質問することで、考えてもらって、ぽんと出てきたりと、そういう場にできるといいのかなとそういう風に思います。
入 倉 なるほど、特に現役の方は明確なゴールはあるのは当たり前ではないという事ですね。
鈴 木 僕自身、こうしたいみたいなものってそんなに固まっていないので。むしろそう言うことを考えるよりも、日々の生活とか子どもとか仕事とか、そっちに目線が向かっている中で、相談に来ていただいているので、役に立てることは何だろう?って考えると、普段考えていないことを考えられるような質問をして、そのときに新しい発見がぽんと出てきて、もしかしてそれがその人の潜在的な関心事かもしれないかもしれないですし。そう考えるに至った背景とかを聞いていくことでもしかするとその人の頭の中が整理されて、それがもしかすると資産運用ということを考えたきっかけかもしれないみたいな。そういうスタンスで、面談に臨んでいます。
宮 原 考えていないことを考えられるような場にするというのは、すごい重要なこと。その前段階というのかな。いろんなことを考えているんだけど、それを考えていることを一回出していただいて、スッキリするっていうのがひとつあるのかな。さっき頭の中を整理するって言っていたけれども、自分がお客さまと最初に面談するときは近いなと思うなっていう感じがしました。考えてなかったことも、新たな発見気づきを得られるっていうところも非常に大事ですし、ここまで考えていなかったかな。まずはお客さまの体験や何をしてきたのか、頭の中にあるいっぱい考えてきたものを整理するということが、ゴールと言うか、資産運用を始めるにあたってとか、資産運用しているものをもう一回振り返ってみる。見直しする上で大事なのかもしれないですね。
新 屋 私もゴールを明確に持っている人は少ないなと思っていて、国民性と言うと大げさな話ですが、なんとなく日本人って目の前のことを真面目に頑張ってしまうとか、やりたいことを叶えるためにチャレンジしている方が多いように思います。面談の時は、よく出てくる言葉とかを拾っていけばなんとなくこういう生き方をしたいのかなと見えてくることもありますしね。
入 倉 無意識に繰り返している言葉ですか。
新 屋 そうそう。ゴールじゃなくて、「これは嫌だ」みたいな。そっちから、「こうしたい」が見えてくる人もいますね。
入 倉 「これは嫌だ」ってどんなことがありますか。
新 屋 例えば、将来人に迷惑はかけたくないとか。そういうのは多い気がします。人に迷惑をかけないこれからの時間の過ごし方。それはどういう過ごし方なのか?っていうのを話していると、なんとなくゴールが見えてきますね。繰り返し出てくる言葉だったり、過去の体験とか。いま友達がこんな感じなんだけど。みたいな人の話とか、そういうのを聞いていく中で、気持ちがでてくることっていうのがあるので、そういうところから、自分から出ない人はなんとなく推察しています。
入 倉 そういうヒアリングを意識しているということですね。三橋さんはいかがですか。その方の資産運用のゴールを聞くためにしている事はありますか?
三 橋 「あなたのゴールはなんですか?」って聞いても出ないケースが多いですね。私はいろいろ過去から聞いて、現在があって、そして将来に向けてのことをヒアリングします。それぞれの思いを聞いていき、潜在的な部分に自分で気づいてもらうようにしています。そして自分のゴールはこういうものか、って気づいてもらうのがゴールベースの根本かと思います。プランニングをするにあたっては理想的なんじゃないかな。でも、相談に来てゴールがない(見つかっていない)という人も大半だとは思います。そんな時は資産の色分けをしましょうという話になりますね。「とにかくお金があってこれどうしたらいいんでしょうか?」っていう方がいたとします。それを「何年後にいくらにしたいです」とか具体的になければ、まずは状況のヒアリングです。あなたの家計状況とか家族の状況とか、置かれている状況ですと、このお金はこれにしたほうがいい、このお金はあれにしたほうがいいっていう、小さなゴールみたいなものが、お金の色分けをすることで積み重なっていきます。例えば、教育資金としてこれは一千何百万、分けて〇〇にしましょうとか。
新 屋 三橋さんのあの話はすごく良いなって思うんですよね。あの蔵を建てるっていう。
入 倉 その話聞かせていただいてよろしいですか。
三 橋 これは長くなるのですが・・・。まず背景から。ある女性のお客さまの話で、当時は東京にお住まいだった方です。お子さまは成人して一人暮らし。ご主人が亡くなった際、運用資産の相続などもあり、ご相談にいらっしゃいました。ご主人が亡くなったことで、東京にいる理由がなくなり、またお母さまも体調を悪くしているとのことでしたので、地元に戻ろうかと考え始めていました。地元と東京の往復が続くうちに、次第に二重生活のような状況になってきましたが、だんだん地元の方の居心地がよくなってきたようで、その後、お母様の具合がより悪くなり、地元にいるほうが長くなっていました。まだ(お母さまの)相続のこととか考えたことはなかったけど、具合が徐々に悪くなっていく中で、漠然と考えるようになっていきました。そこでお母様がお持ちの資産がいくらあるのかを一緒に調べてみたところ、現金だけで2億5000万円以上持っていることがわかりました。そのくらいの資産規模になってくると、相続人になる人も少ないので、何らかの相続税の対策をしたほうが良いのではないかという話になりました。生前贈与のアイディアもありましたが、お母さまのご年齢と資産額的に適さないということで、最終的には資産の多くを不動産に換えることで相続税評価額の大幅な圧縮をしました。という感じです。
それでもまだ、残っていて。このお金はどうしてらいいんですかね?という話を受けました。「それでしたら、お母様のために使ってもいいんじゃないですか?浪費というわけでなく、ご自身の本当にやりたいことにお金を使って、結果的にお金が減るのであれば、相続対策にもおまけとしてなると思います」とお伝えしました。そのやりたいことは何かというと、「蔵の改修」でした。その方のご実家は地元の名家の本家で、映画のセットみたいな家なんですね。そして、そこだけは本家としてしっかりメンテナンスしていきたいっていう、ある意味、威厳を保ちたいっていうのがあって。その中で、特に家宝が収納されている蔵が老朽化していて、それを本当は直したいんだけれども、節約家の方だからずっとそのままになっちゃって・・・。お金を使うことにすごい抵抗があったみたいで。でも本当は直したいという思いもあり、お母様はずっと葛藤していたようです。娘であるお客さまでも判断が付かず、「どうしたらいいんでしょうかね?」と。その後、ご面談を重ねる中で、最終的に「それは使ったほうがいいんじゃないでしょうかね」ってお客さまに伝えました。その後、本家に帰ったお客さまがお母様に、「『使っても大丈夫』って言ってた人がいたよ」って伝えてくれたらしいんですね。保有資産や、収支の分析をキャッシュフロー表に落とし込んだ結果、問題ないということも併せて。「じゃあお金を使って蔵を改修しましょう」と言うお気持ちになっていただきました。一戸建てを建てられるくらいの値段の立派な蔵に改修したとのことでした。「母はすごい喜んで、その後帰るたびにいつも、『あの時、蔵が建てられてよかったよ』という話をされるんです」って仰っていました。お母様もそれで喜んで、満足していただけたようです。その数年後に、お母さまは他界されました。お母さまには本家を守りたいというお気持ちがあって、守るためにしないといけないのが、例えば「跡継ぎを見つける」とか、「本家らしいちゃんとした佇まいの家を維持する」ことだったらしいんですね。潜在的にやりたいと思っていたんだけれども、踏み出すことができなかったとのことでした。踏み出すことが出来なかったことに対して、根拠を持った後押しをすることが自分の仕事だったと思います。
入 倉 いいお話をありがとうございます。三橋さんの提案がゴールへの後押しとなったんですね。
宮 原 その話を聞いていて、資産運用じゃなくてもいいんですよね。ゴールを達成する方法って。
新 屋 ゴールによってはね。運用以外の方法もありまするよね。
宮 原 それは今までの貯蓄でそれをやろうということだから、それは、それまでの方法としてどうするかというよりも、それをどう使うかっていう話ですけど。
入 倉 今回はここまでにしたいと思います。ありがとうございました。
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