2024年7月7日(日)に楽天証券主催で開催した「楽天証券25th ANNIVERSARY FES」。楽天証券株式会社の楠社長、なかのアセットマネジメント株式会社の中野社長、弊社代表中桐によるパネルディスカッション「NISAでみんなミリオネア」(※)の様子をお届けします。
※楽天証券オウンドメディア「トウシル」運営公式YouTubeに遷移します。
司会:富裕層の目安とされる金融資産1億円。国際的には金融資産100万ドル以上保有しているミリオネアが富裕層の目安となっています。為替水準が以前よりも円安になった今、1億5000万円が富裕層の目安となりそうです。
今回は資産づくりについて長年にわたり変革に取り組んできた3人の経営トップが持論を語ります。
中桐:私たち、ファイナンシャルアドバイザー(FA)は、資産運用のご相談にこられた方から、夢や関心事などをヒアリングして人生設計のプランづくりをお手伝いしながら、そのプランに基づいて必要な商品、サービスをご提供しています。そのために当社は楽天証券のプラットフォームを活用しています。
また、お客様が資産運用を開始した後も、定期的にお客様との対話を継続します。マーケットは絶えず変動しますし、お客様には新たな悩みや人生設計を変更する必要性などが生ずる可能性があるからです。
このような方式でお客様に長期にわたって資産運用のアドバイスを提供していくのが私たちの役割です。
司会:ファイナンシャルプランナー(FP)についてご存じの方は少なくないと思いますが、ファイナンシャルアドバイザー(FA)は、FPのような提案、アドバイスに加えて、具体的な金融商品の提案も行うのですね。
中桐:「FPとFAの違いは何か」という質問をしばしば受けます。
私たち、FAはしっかりとしたファイナンシャルプランをご提供し、そのプランに相応しい具体的な金融商品を提案し、お客様に購入していただきます。そして、その後の運用面でのアドバイスまで行うからこそ、責任をもってお客様と長期的なお付き合いをしていくことになります。
FA先進国の米国では、資産形成、資産運用の領域ではFAが主流と言えるほど、その存在感が大きくなっています。彼らはお客様との間で、20年、30年、さらには次の世代へと続くような非常に長い時間軸のお付き合いを続けています。
楠:わが国ではFAの存在感は米国ほどではありませんが、それでも、中桐さんのGAIAのような独立系FAは増え続けています。
たとえば、当社と契約しているIFA法人は、GAIAを含み130社、全国で約4,000人以上のアドバイザーが活動しています。米国では10万人ものアドバイザーが活動していて、一定の資産を有している方にとっては「わが家の掛かりつけ医」のような存在にもなっています。
わが国でもIFAがそのような存在に進化していくことはまちがいないでしょう。
司会:中桐さんはどういう思いでこの領域に挑んできたのですか。
中桐:私はかつて、2年間、米国の大学に留学しました。そのとき、大学教授の自宅を訪問して、あまりの豪邸さに驚かされました。思わず、「なぜ、こんな豪邸に住めるのか」と尋ねたところ、彼は「きちんと積立投資をしてきた」と説明し、さらにこう語ってくれました。「信頼できるFAと資産を築いてきた」と。
私がFAの存在を知った衝撃的な出来事でした。
最近も同様の実感を深めました。米国視察に行って、現地でFAの方々といろいろな会話してきたのですが、あるFAはこう説明したのです。「私のお客様の9割は年金プラン401kでコツコツと積立投資をしてきた人だ」と。
つまり、ミリオネアになることは決して夢の世界ではない。それを実現するためにFAの存在が求められる。これこそ私が強く抱いてきた思いです。
中野:今日、この場に中桐さんと私が同席しているのは意味があることだと思います。
運用会社が長期投資を提供し、あわせてFAが一人ひとりのお客様に投資のあり方まで、きちんと寄り添ってアドバイスする。それが米国ではごく自然の形で定着しているからです。わが国ではまだ、定着しているとは言えませんが、これから数年後には、米国のようにごく当たり前のことになっているにちがいありません。
楠:その通りですね。中桐さん、中野さんのお二人に共通するキーワードは「長期投資」だと思います。
中野さんは「積立王子」の異名をとるほど積立投資に熱心です。改めて積立投資の意味づけをお聞きしたいです。
中野:目的は目先ではなく、人生の遠いところにゴールを設定しているはずです。長期投資は設定したゴールに向かって忍耐強く継続することです。
それが資産を大きく育てていく大事な手段のひとつであるということに尽きるのですが、その際、得てして「相場で勝つ」ということと重ね合わせて考えられがちです。
短期的には相場に勝つこともあれば、負けることもある。しかし、その結果としてお金は計画的、合理的に育っていかない。長い時間を費やすことでこそ、計画的、合理的に「お金育て」ができるわけです。
そのために最も適した投資行動が積立なのです。積立投資は時間を分散する効果があります。それによって、たとえ相場が一時的に暴落しても動揺しないような安心感が得られます。
積立投資は心の安定装置と言えます。
楠:私も同感です。一方で、わが国では長期投資はまだ根付いているとは言えません。
中桐さんはFAという立場で多くのお客様と接しています。「個人の方が陥りやすい罠」のようなパターンはどういうものであり、それをいかにして克服すればよいのでしょうか。
中桐:「投資は長期」、「短期は投機」という違いをきちんと理解しなればいけません。
投資対象は上場企業の株式です。過去の実績をみる限り、長いレンジで上場企業は7パーセント程度という比率で成長しています。ただし、マーケットは大きく変動する場面もあります。
直近で言えば、新型コロナ感染症の蔓延を理由に株式相場が暴落した「コロナショック」が発生しました。
相場である以上、一時的に価格が大きく下がることはあります。まず、このことを認識したうえで、相場が下がったときに投資対象を低価格で購入できるという積立投資の仕組みをしっかりと理解しなければいけません。そして、必ず、相場は回復します。上昇トレンドに戻り、それに伴って投資のリターンも回復していきます。これはとても重要なことです。
楠:FAという立場から、そのようなアドバイス、支援を提供しているわけですね。
中桐:その通りです。「コロナショック」のような場面が生じた際には、色々なデータを提供しながら「過去にも同様の事態はありましたが、暴落から3、4カ月後には相場は戻ってきています」というように説明しています。そうすると、お客様は安心されます。
それだけではありません。そのようなときこそ、「何のために投資しているのか」という本来的な目的を再確認して頂く作業を行っています。
つまり、投資資金は今、使わなければならないのではなく、10年後に目的を実現するために使うお金ですね、というように改めてしっかりと目的を確認して頂き、結果として、「今、売却する必要はまったくない」ということをアドバイスするわけです。
楠:つまり、FAの役割は、お客様の要望、人生の計画などをヒアリングして投資のプランを策定することと、コーチング。
これがキーワードになっているのでしょうか。
中桐:そうですね。ところで、何のためにお金を運用しているのか。人生を楽しむためにほかありません。
米国で近年、『DIE WITH ZERO』という書籍が話題になっていました。同著では、イソップ童話のアリとキリギリスの話が取り上げられています。ここで「アリは幸せだったのか」と問題提起しています。勤勉に働くだけではなく、楽しんだり、良い経験をしたりして人生を豊かにする。つまり、きちんと資産を運用で殖やして、それを使っていこうという考え方です。
一方、なぜ、お金を安心して使えないかといえば、将来に向けて漠然とした不安を払しょくできないからです。
そこで、私たち、FAを活用して、きちんとプランニングして安心してお金を使って豊かで素晴らしい人生を送っていただく。これが私たちの役割です。
楠:中野さん、いま、大衆に広がっているNISAを活用した資産づくりのほとんどはS&P500やオールカントリー(全世界)といったインデックス型投信への投資となっています。そうしたなかで、中野さんは新たな運用会社を立ち上げてアクティブファンドの運用・普及に取り組み始めました。
その意義と、投資のあり方をお話してもらえますか。
中野:私は前職(セゾン投信)では、パッシプ型の運用を皆さんにお勧めしてきました。長期安定型の投資にインデックス型投信はきわめて合理的だと思ったからです。この考え方は今も何ら変わっていません。
ただ、この先、いつかはわかりませんが、必ず、下げ相場がきます。そのとき、投資の本質を考えずにインデックス型に投資した人たちは、相場変動がもたらす恐怖心に耐えられなくなります。ぜひ、この機会に「何のために投資するのか」を意識して頂きたい。
ご自身のお金を投資に振り向けていくことには、もうひとつの意味があります。
それは未来に向けた、皆さんの意思表示ということです。たとえば、日本株への投資は、日本の良い企業をさらにより一層素晴らしく、強い企業へと育てて、日本経済をより元気にして、次の世代に元気なニッポンを残していくという思いを込める行為でもあります。そのような明確な意思をもって行えるのがアクティブ運用です。したがって、インデックスだ、いや、アクティブだと二者択一的な論争をするのはまったく無意味です。
アクティブ運用の本源的な魅力は、しっかりとした銘柄選択です。リサーチに基づく運用会社の銘柄選択に対して、皆さんが共感、共鳴できるかどうかということ。ある意味で素晴らしい未来に向けた「推し活」がアクティブファンド選びです。
相場のトレンドを当てにいくのがアクティブファンドというような考え方は判断の埒外に置いて頂きたいと考えています。
楠:わかりやすい説明ですね。それでは注意が必要なアクティブファンドとはどんなものですか。
中野:着目点は哲学、理念をその運用のなかに、きちんと見いだせるかどうか。投資対象の企業に関する将来ビジョンを運用担当者が明確に語れて、そして、そのような哲学、理念に沿った運用をきちんと行っているかどうかがファンド選びの目安です。
というのも、残念なことに、そうではないファンドのほうが圧倒的に多いという現実があります。やや格好をつけた表現をすると、私たちのお金を長期産業資本として産業界に提供していくという意味で、私たちはアクティブファンドを通じて産業資本の提供者になる。あるべきアクティブファンドとは、哲学、理念がしっかりとしていて、運用している人間がそれを投資する人たちに対して、顔が見えるようなやり方で明確に語れるものでなければなりません。これは装置のように仕組みを作れば、あとは長期投資するだけというインデックス型との大きな違いでもあります。
司会:最後に、楠さんに締めくくってもらえますか。
楠:「NISAでみんなミリオネア」というテーマでお話して頂きました。
キーワードは「長期投資」です。
そして、中桐さんにお話いただいたように、個人が陥りやすい評価損失に対する過剰心理も自覚しながら、ときにはプロフェッショナルのアドバイスも受けて、みんなでミリオネアを目指していく。
必ずしも、ミリオネアになるためには特別な条件は必要ではありません。時々、見直しをしながら着実に積立投資を継続していく。その重要性をご理解いただけたかと思います。
楽天証券は皆様の長期投資をしっかりとご支援して参りますので、何卒、よろしくお願いいたします。
※2024年6月末:契約IFA 130社、契約アドバイザー4,019人