海外駐在が決まった際、多くの方が準備に追われる中で、意外と見落としがちなのが「証券口座」の取り扱いです。
今回は、よくあるご質問の一つである「海外駐在中に証券口座をどうすればよいのか?」について解説します。
目次
日本の証券口座はそのまま使えるの?
結論から申し上げると、「原則として制限がつきます」。
日本の証券会社は、税制上の懸念などの理由から「日本国内に居住している個人」を対象にサービスを提供しています。そのため、住民票を抜いて非居住者となった場合、多くの証券会社では、居住者と同じ条件での口座の継続利用ができなくなります。
以前は、海外駐在が決まるとすべての資産を売却し、口座を閉鎖するよう推奨する証券会社が多くありました。しかし近年は、NISA制度の普及などにより、証券会社によっては、出国前に所定の手続きを行うことで、非居住者の間でも商品によっては保有や売却が可能となるなど、より柔軟な対応をとるケースも増えています。
そのため、駐在が決まった際には、まずご自身が利用している証券会社が非居住者に対してどのような対応をしているのか、最新の情報を確認しましょう。対応内容は証券会社ごとに異なるため、個別に確認することが大切です。
また、出国期間が5年を超える場合には、特定口座に戻せない、NISAの継続は出国後5年までとするなど、期間に関する制限が設けられているケースもあります。さらに、出国中に保有銘柄の一部を売却した場合、その銘柄は帰国後に特定口座へ戻すことができないなど、細かな注意点もあります。こうした点も含め、事前によく確認しておくことをおすすめします。
加えて、手続きが完了しないまま非居住者となった場合、証券会社の判断で保有資産を売却・決済される可能性がある旨の記載もあります。手続きを行わないリスクについても、あらかじめ把握しておく必要があります。
ネット証券大手2社の対応(各社公式サイトより要約)*2025年3月26日時点
SBI証券
▶継続可能な口座
・証券総合口座
・NISA口座 ※1
・特定口座 ※2
※1:出国理由が海外転勤またはその配偶者の帯同である場合に限ります。自己都合による留学やボランティア活動目的の出国などは対象外です。
※2:出国時に特定口座で保有している商品は一般口座へ振替の上、特定口座を廃止。ただし、帰国時に再度特定口座へ戻すことが可能です。
▶保有可能な商品
・日本株式
・外国株式 ※
・投資信託 ※
・日本国債
※外国株式および投資信託は、NISA口座での預かりに限り継続可能。ただし、出国先の税制・規制により保有継続ができない場合もあります。
▶取引の制限
・すべての取引が制限されます。
▶注意点(抜粋)
・手続きが完了しないまま非居住者となった場合、当社の任意で保有証券等の売却・決済を行う場合があります。
楽天証券
引用元:海外出国のお手続き
▶継続可能な口座
・総合口座
・非課税口座(NISA)
※NISA口座は、海外転勤またはその帯同配偶者の場合に限り継続可能。
▶海外転勤における継続保有商品の一覧
・総合口座
・非課税口座(NISA)
※NISA口座は、海外転勤またはその帯同配偶者の場合に限り継続可能。
商品・サービス | 保有 | 取引 | ご注意 |
国内株式、ETF、REIT | 可 | 売却のみ可 | 出国前に積立設定・貸株設定の解除が必要です |
外国株式、ETF | 可 | 不可 | 出国前に積立設定の解除が必要です |
投資信託 | 可 | 売却のみ可 | 同上 |
債券 | 可 | 売却のみ可※ | ※外国債券は出国中の売買ができません |
外貨建MMF | 可 | 売却のみ可 | - |
金・銀・プラチナ | 可 | 売却のみ可 | 出国前に積立設定の解除が必要です |
信用取引(国内株式・外国株式) | 不可 | 不可 | 出国前に決済が必要です |
先物・OP・FX・バイナリー・CFD | 不可 | 不可 | 同上 |
楽ラップ等の投資一任サービス | 不可 | 不可 | 同上 |
▶注意点(抜粋)
【特定口座を継続される際の注意点】
・出国期間が5年を超える場合、特定口座へ戻せない可能性があります。
・出国中に保有銘柄の一部を売却すると、当該銘柄は帰国後に特定口座へ戻せません。
・出国中に株式分割などのコーポレートアクションがあった外国株式も、帰国後に特定口座へ戻せない場合があります。
【非課税口座(NISA)を継続される際の注意点】
・NISA口座の継続保有は、出国日から5年後の年末までです。
・上記期間までに帰国届が提出されない場合、NISA口座は停止され、保有商品は自動的に一般口座へ移管されます。
まとめ
海外駐在はライフスタイルが大きく変わるタイミング。証券口座の取り扱いも、将来の資産形成に大きな影響を与える重要な要素の一つです。
出国前にきちんと情報を整理・確認することで、安心して新生活をスタートすることができます。
GAIAについて
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駐在先での仕事に専念し、安心した生活を送るためにも、お金周りの整理をしておくことが大切です。
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